【麗し大和】(15)柳生みちの仏たち(産経新聞)

 ほほ笑みと、憂いと。枯れ葉で滑り落ちそうになる急斜面をよじ登り、ようやくたどり着いた「夕日観音」(実は弥勒仏)は、なんともやわらかな表情で迎えてくれた。いったいだれが、何のために彫ったのか。路傍で出会う仏には、お堂の中とはまた違う尊さがある。

 世界遺産・春日山原始林を通り、奈良と柳生の里を結ぶ柳生街道の滝坂道は人気の高いハイキングコースだ。渓流に沿って続く苔(こけ)むした石畳は、歩きにくいが歴史の中に迷い込んだ気分。江戸時代、奈良奉行によって敷かれたそうだが、所々に古い石仏が並ぶ“仏さまロード”としても知られている。

 奈良方面から歩くとまず最初に出会うのが、転落して横に倒れたままの「寝仏」。次に「三体地蔵」が左斜面に見え、そのはるか上に「夕日観音」を見つけた。弥勒信仰のさかんだった鎌倉時代の作というから700年あまり。頭にからだに生じたひび割れは、風雪に耐えた歳月を物語る。

 作者を知る手がかりはその先、小川の上の大岩に彫られた「朝日観音」にあった。こちらも弥勒の磨崖仏(まがいぶつ)で同じ人物の作とされ、文永2(1265)年、僧侶だろうか、「性融」という人が亡き母のために造ったと銘文が残る。

 朝日を受けて輝く仏と、夕日に照らされ西方浄土を向く仏。母を思う心が刻んだ磨崖仏は時を経て、昼なお暗い山道をゆく人々の守り仏となっている。(文 山上直子)

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